今整備士に求められている技術とは?故障診断のコツから次世代整備士像を考える

今の車って10年前の車に比べると飛躍的に性能が向上してきています。

いわゆるキャブレター時代から電子制御に移ったときと同じくらい。

車の中をあらゆるセンサーで監視して、それらのチェックをECUがモニタリングしている。僕は車の故障って大きく分けて2通りにわけられると思います。

外部損傷・部品磨耗による故障

1つ目が、見た目明らかに外部が損傷している故障。これは板金整備も中にはいってくるわけですが、タイヤがバーストしたとか下回りをぶつけてアームを曲げちゃったとか・・。

見た目で判断が効くので部品を修理するとか、叩いたりして直したりするのか。

これと似ているのが部品の磨耗や消耗による故障。これも見た目で一発です。例えばブレーキパッドが磨り減り過ぎてローターを削ってしまった。

ファンベルトが切れて、エンジンが止まってしまった。などなど。こういった部品磨耗や消耗による故障も消耗部品を交換すれば修理はできるわけです。

医者に例えると外科医の仕事になってくる部分。手術といえばオーバーですが、部品を交換したりするわけです。

車の電子制御によるトラブル

続いてのトラブル。これが近年かなり増えてきています。それもそのはず今の車は最初に書いた通りいろんなセンサを用いて電子制御しています。

もうその技術が10年前とは全く異なる進化を遂げてきている。自動車メーカーの切磋琢磨たる技術です。この部分に関する故障診断で悩んでしまう整備士が増えてきている。

この電子制御に関する故障を診断・修理するには技術だけではまったく歯がたちません。技術を部品交換等による作業効率の優位性と考えるなら、電子制御による故障は知識がないと直せません。

昔のエンジニアは技術があると言われると、それを表していたのが作業スピードが速い。仕事が正確といったところでした。例えばAという車のタイミングベルトを交換・クラッチをOH。他の整備士よりも作業スピードが早くて、正確。これが従来の技術の一環。ここにキャブの調整など細かい部類は加わってきますが。

実際に技術力の高い先輩整備士の仕事を見ていても、エンジンチェックランプ点灯による故障でマイナーな故障コードが入ってきたりすると悩んでいます。

医者で例えると内科の部類に入ってくるのかもしれませんが、整備士の仕事はどちらかというとこっち側にシフトしてきている。

電子制御のトラブルを確実に直していくためには

一にも二にも勉強です。もう努力を怠っている整備士はこれからの車は直せません。周りの整備士を見ていると、伸び悩んでいる人も多い。

電子制御の故障診断はとにかく再現すること。整備の基本中の基本なんですが、これを忘れてはいけない。例えばお客様ご用命事項に、

「走行中異音がする」

と書いてあるとします。

「ああ、異音がするのか。どれどれリフトアップして確認するか」

これはダメ。絶対ダメ。まずは走れ!とにかく走れ!実際に音を聞け!これができていない整備士がいる。現象を再現せよ!とくに問診をしたフロントマンや車を取りに行った営業マンの話を鵜呑みにする整備士。これもダメ。ダメダメダメダメ(笑)

自分自身で音を聞け!聞いた後にお客さんに自ら聞け!これができない整備士がかなり多い。フロントマンを通すな!営業マンを通すな!人を介す事で伝言ゲームになってしまい、核心にたどり着くことができない。

僕は必ずユーザーに聞くようにします。ユーザーがそこにいれば一緒に同乗走行をしてもらいます。そして自分が聞こえる音とユーザーが訴えている音が一致しているか?そこからスタートします。じゃないと難しい異音なんか絶対に直せない。

これは異音に対する故障診断の例ですが、エンジンチェックランプやエンジン不調についても同様。

とにかく症状を再現せよ!ここがとにかく重要です。

エンジンチェックランプが点灯して、エンストを起こすといったことを例に挙げると

OBD2を接続。まずは故障コードが入っているかを読み取る。故障コードが入っていたらそのコードとパラメーターを印刷。パラメーターというのは、故障コードが入った時のエンジンの各状態です。

エンジンチェックランプが点灯したら、その時の状態をECUはメモリしています。エンジン回転数が1000の時、水温が90度で、O2センサはこうで・・。と、OBD2の診断機の性能によって読み取れる数値は変わってきますがこの数値はかなり重要です。

これを印字、もしくはメモリしておこう。その上で、一旦チェックランプのメモリを消去します。ここからOBD2をデーター表示モードに繋ぎ変えて状況を再現に入ります。

当然1Tripでチェックランプは入ってこない。1TripというのはイグニッションON〜OFF1回までのことです。

つまり何度かエンジンを切ったりかけたりもしないといけない。後輩が、

「O2センサが故障って出てるんですが、バンク2センサ1とか見極め方がわからない」

って相談にきたことがあります。

「メーカーによってバンクの考え方が違うから、故障コードとパラメーターをメモリした上でコードを消して、このセンサだと思うカプラーを抜いてみろ」

と教えました。

「先輩、チェックランプ点きません」

「馬鹿者!1Tripでコードは入らない!3Tripくらい続けろ!」

とさらに教えました。こうするとカプラーを抜いたO2センサの故障コードがチェックランプで入力されます。トヨタのV型でO2センサ4つだろうがホンダの4つだろうが、的確に故障コードが出たO2センサがわかります。

このように、エンジンチェックランプは仮にO2センサの配線が走行中に切れたとしても点灯しないんです。断線状況で何秒か経過、さらに2Trip以上同じ症状が続いた時ECUは

「O2センサがおかしい!チェックランプ点灯だ!」

とランプを点灯させるのです。

なので、故障コードを再現するのは1TRIPで諦めるなんていうのは愚の骨頂です。

話を戻して、エンジンが止まった症状を再現できたらその時のデータモニターで何が悪いのか仮説を立てる。

わかった!クランク角センサっぽいな!交換だ!と気を焦ってはいけない。これもダメ。ダメダメ。

もしクランク角センサじゃなかったらどうします?その部品代は?誤診は会社に損害を与えます。僕は企業戦士でもなんでもないですが、自分の仕事には責任を持っています。

「俺は雇われの身だし〜」

という雇われ根性ではダメだ!ダメダメ!そこは意識を変えましょう。今は会社の社員だとしてもSNSですぐにネットに書き込まれてしまう時代ですよ。

Aという会社の整備士ではなくて、

Aという会社のAという整備士と、世間では認識されます。仕事をもらっている以上全力を尽くせ!それが嫌なら起業しろ(笑)

さらに話が脱線しました。

ようやく犯人はクランク角センサっぽいところまできました。あとは証拠を叩きつけるだけです!そうですオシロスコープだ!OBD2のオシロスコープを使って、エンジンがストールする寸前のクランク角センサの波形を見るんだ!

あったか?波形の歯がかけているところが!

ようやく証拠も揃ったところで部品を発注といったところですが、僕はもう一歩踏み込みます。昔よく陥れられたトラブルですが、トラブルが2重トラップになっていないかを確認する。

クランク角センサが壊れているのはもう証拠が出た。ただ、他の故障も紛れていないか?ここまで探っておいてお客さんに話を伝える。

部品代と工賃と納期を伝えます。

無事に修理を完了したら、そこで終わりでもありません。さらに次世代の整備士に求められる能力です。

アフターフォローのできる整備士になれ!

的確な故障診断ができる整備士になったあと、あなたを唯一無二の整備士にする方法。それはアフターフォローをするということ。

修理が終わった1週間後でも10日後でもいいんです。お客さんの家に電話してその後の調子を聞く。

調子よく使っているよ!ありがとう!という言葉をもらえたらOK!グッジョブです。これが今整備士に求められているものなんだと僕は考えています。

そのお客さんの担当整備士にならなくてもいいんです。1つ1つの仕事を正確に誠実にこなしていく。それだけで、あなたの会社の評判も上がるし、あなた自身の評価もお客さんから上がっていきます。

出世競争とかそういうのは僕は何の興味もありません。ただ、お客さんアンケートなどで、名前の挙がってくる整備士になりたいと思っています。会社に嫌がられようとユーザー目線でいられる整備士。これが僕のたどり着いた整備士像。

補足として嫌な先輩整備士像もあげておきます。

それは後輩にノウハウを伝えようとしない。情報をかくまってしまう整備士です。これには言い分もあります。せっかく自分が苦労して身につけたノウハウだから教えたくない。この意見もわかる。

あなたが個人で経営している整備工場ならそれでもいいでしょう。ですが、一人の整備士の失敗は会社全体の信頼に繋がってきます。整備士の技術レベルは平均化するべき。誰か一人が突出していてもうまく回りません。その人がいなくなったらどうします?それよりはノウハウをキチンと後輩に伝えるということ。

次世代の整備士を育成しない工場に未来はありません。ただ、同じことを2回聞いてくる整備士には愛の馬場チョップでもOKですけど。

僕もまだまだ修行中です。とにかく1つ1つの仕事を丁寧に誠実にこなしていこうと奮闘中。明日もどんな罠がまっているか・・1つの罠をかいくぐったら、同じ罠にはかからない!

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