新車で販売したばかりのスペーシアですが、お客さんから担当セールスに電話がありました。
「システム一時停止と出てエンジンがかからなくなったから助けてほしい。」
この車はデュアルカメラブレーキサポートを搭載して、プッシュスタート方式の車です。
営業は、お客さんに落ち着いてブレーキを踏んでもう一度試してみてくださいと伝えたが、電源が少し入ってセルが回らないままでエンジンがかからない。という。
この時点で担当セールスからヘルプを出され、出張で行ってきました。
そうしたら、これは意外な結果でした。
目次
エンジンがかからなかった理由
まず、スペーシアのインフォメーションディスプレイに
「システム一時停止」というメッセージが出た。なんの故障なんだ?と、お客さんがご立腹だという。
現場に行って車両を確認したら、その原因が全てわかりました。
最初の動作が大切なので、それぞれをきちんと把握しながらエンジンをお客さんの前でかけてみました。
この時に感じたことは、ブレーキペダルが固いな。ということだけ。
僕がやってみたら一発でエンジンがかかった。
まず最初の疑問にあった、電子キーの電池切れですがこれはなし。正常です。だって新車で販売してからまだ1ヶ月も経っていないのです。
電池切れなんてことはない。
実際に僕はエンジンをかけられた。
そして、僕が気になったのはブレーキを踏み込んでエンジンをかけようとした時にペダルが固かった。
スズキのプッシュスタートに限らず、エンジンを始動させる時はブレーキペダルを踏みながらプッシュスタートを押さないといけないわけですよね?
意外と認識されていないことなんですが、プッシュスタートでエンジンをかけるための表示があるのです。おそらくほとんどのドライバーは言われてみて
「ああ、そういえば」
と思うくらいだと。
画像にも出ていますが、緑色のボタンのマークが点灯しています。ブレーキペダルを踏み込んで、このマークが点灯したらプッシュスタートを押さないとエンジンがかからないのです。
ではなんでオーナーがブレーキペダルを踏んだのにエンジンがかからなかったの?という疑問がでるわけですが、これは簡単。
僕が最初に現車を確認した時、異様にブレーキペダルが固かった。
これが意味することは、マスターバックの中の負圧がなくなってブレーキアシストが効かない状態にあったということ。
つまり、オーナーがいつもエンジンをかけている踏力では、車がブレーキペダルを踏んでいると認識していなかった。緑色のマークが点灯していなかったわけです。
その状態のままプッシュスタートをオーナーは押したので、ACCまでしか電源が入らなかったというわけです。
これがエンジンがかからなかった理由です。
ではシステム一時停止ってなに?という疑問が残ります。オーナーはこのシステム一時停止がエンジンの故障を意味するものだと思っていたらしい。
システム一時停止の理由
「システム一時停止」の意味はエンジンとは全く関係ありません。
デュアルカメラブレーキサポートは、雨が降ったり視界が悪くなったりすると、危険なのでシステム一時停止させるそうです。
この日はかなりの横殴りの雨でした。視界が最悪で、ECUはシステム一時停止を表示したんでしょう。これは説明書にきちんと書いてあります。
オーナーが知らなかっただけです。まあ説明しなかった担当セールスもいけないわけです。
僕はこの手のブレーキアシストが出た当初、ダイハツ系のものでイステム一時停止というものを体験していたから最初からエンジンとは無関係だと思っていた。
今の車って、かなりいろんな装備がついています。担当セールスは本来ならその機能全てを把握した上でお客さんにきちんと説明する能力をもたないとまずい。
特にディーラーは、そのメーカーのスペシャリストなわけです。彼らならおそらくこれらの原因は電話の問診でわかったでしょうね。ですが、当社はいろんな車種を売っていて担当セールスの知識が広く浅すぎた。
もっと勉強しろって突っ込んでおきましたけど(笑)
エンジンがかからなかったのは、オーナーが雨でブレーキペダルを何度も煽ってしまったからでしょう。
説明し終わった後にオーナーに当時の状況を思い出してもらいました。そしてその動作を全て再現した上で、エンジンがかからない現象も再現した。
これでようやくオーナーは納得してくれました。
ブレーキペダルを何度も煽ると、ブースターの負圧がなくなってブレーキアシストが効かなくなります。こうなると、昔の車みたいに倍力装置が付いていない状態と同じになる。
そんな時に、エンジンをかけようとペダルをいつものちからで踏んでも、プッシュスタートの緑の表示はメーターには点灯しません。
いつもよりも強く踏み込むか、ながーく踏み込む。これらの動作をすることによってインジケーターが点灯するので、その時点で初めてプッシュスタートを押してください。
と説明しておきました。
オーナーは雨の日で焦って、何度かブレーキをポンピングしてしまったと言っていました。
ここまでの動作でそれでもエンジンがかけられなくなってしまったら、それこそ大事なので良かった良かったでした
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。
コメント
シートポジションの問題もあるんでしょうね。
負圧がなくとも底まで踏めるシートポジションじゃないと。
新車輸送でもあるんですよ、同じ申告が。
それで私に全否定されるというパターンです。。
最初電話がきた時は正直あせりましたね。納めたばかりの新車でしたから・・
説明書を読まない人が多すぎますね。
あと理解できない装備が多すぎると言う現実もあります。
良い装備と言うのは判っても、現実それを生かせるかといわれると「?」ですね。
だんだんと車の説明書も分厚くなってきましたね・・。昔のガラケー並みに・・