日記・戯言

92歳のお客さんが車を縁石に乗り上げて事故!超高齢化と車社会の本当の課題を現場より

昨日、常連のお客さんから電話があり、縁石に乗り上げてしまったからレッカーに来てほしいと言われて引き上げてきました。

状況を聞いたところ、国道沿いを走行中に目的地が見えたので左折して入ろうとしたら、なんと縁石があった為激しく乗り上げてしまったという。

特にけがもなく、相手もない自損だったのでまずはほっとしたところです。しかし車両を確認すると下部をかなり破損している模様でした。

コアサポートの下部がぐにゅっと曲がって、どうやらクーラントも少し漏れてきているかなと。

レッカー車に積んで、お客さんを家に送っている途中に保険の内容などを聞いてみたんですが、そこでビックリしたのが

「俺は今年で92歳になるんだよ」

という一言でした。いい意味で92歳には全く見えない人で、補聴器なども付けておらず、普通のトーンで会話をしてもやり取りができています。

見た感じが70代と言われても納得してしまうほど若々しい人です。しかし92歳にもなっていたんだなというのがビックリでした。

僕が知る限りうちのお客さんで最高年齢の人は94歳でした。その人も亡くなる間際まで車を使って生活をしていた。

92歳が車を運転せざるを得ない環境下とは?

たびたびニュースになるのが、高齢者の踏み間違い問題や操作ミスなどによる事故。田舎で自動車整備業をやっていると、もう年間にしてかなりの数を目の当たりにします。

ひやっとしたのが、もうちょっとズレていたらコンビニに突っ込んでいたなというものもありました。

ペダルの踏み間違いです。自動ブレーキ搭載前の車だった為、電柱に衝突してくの字に曲がっていた。

高齢になったお客さんが来店すると口にするのが、次の免許を更新できるかわからないというもの。高齢者講習がかなり難しいと言っていました。

都会の人からすると、免許なんか大事に至る前に返納しろ!というかもしれません。ですが、ここ長野の田舎に住んでいると、車がないと死活問題の地域が多数存在します。

例えばバスは1日に1本程度しか来ない。病院まで片道15km以上ある。スーパーまで10km。役場までも10km以上。

どうですか?生活をする上で、衣食住って必須です。食料を買い出しに行こうにもスーパーが遠い。歩いて買いに行ける所なんか近くにないんです。

車で行かないといけない。病院もそう。

家族に相談すればいい!と次に思います。しかし独居老人になってる人が多いです。子供がいても県外でたまにしか顔を見せに来ないなど。

こういった交通インフラも身寄りも近くにない人は、生きていくために車が必須な環境なんです。

商売抜きで向き合っていかないといけないお客さんが多い

今回自損事故を起こしてしまった92歳のお客さんは、比較的町場に住んでいます。

次の免許更新が出来なかったら車はあきらめるといっていました。このお客さんであれば、宅配サービスも充実している地域だし、病院までならタクシーで行ける。

免許を返納したとしても、それほど不便ではないと思います。

しかし、山の中に住んでいる独居の人って、我々車屋をやっている身からしても、商売抜きで向き合っているところがあります。

普通なら、コミュニケーションも取りにくいし、なんせ会社から遠い。手間もかかるけどお金がそもそもあまりない・・。

本来サービス業って、サービスをしただけの対価をもらわないと割に合わないわけです。こちらとしても利益を上げながらじゃないと給料ももらえないし、生活が成り立たない。

でも割増し料金をもらってみてはどうか?という感覚にはなれません。採算度を無視してでも寄り添ってあげないと、この人の生活が成り立たなくなってしまう。

僕等みたいな考えをした車屋がいること自体が、高齢ドライバーに拍車をかけていると言われても仕方がないと思います。でも実際に目の当たりにする環境と光景はそんな生ぬるいものではないのも事実。

そして、ニュースでたびたび見かける踏み間違いなどの事故を聞いていると、心も痛みます。

高齢者に車は乗ってほしくないのが本音だけどそうもいかない環境にジレンマ

正直な本音を言うと、僕は高齢者には車に乗ってほしくないと思っています。

やはり事故につながる確率は、年齢が上がるにつれ感覚が鈍るため上がっていきます。僕自身も車に轢かれたこともあるし、子供も2人車に轢かれたことがあるんです。

ひどい交通事故で、足の骨を数か所折ってしまい、車いすを使って学校に通わせていました。学校まで送迎して着いたら先生を数人呼んで、3階の教室まで車いすごと運ぶんです。

当時の教室は3階だったので、先生にもみんな迷惑をかけていましたね。

今は治ったからいいものの、もし事故で最悪のケースであったらと思うと、ドライバーを許せるかどうかって別問題ですよね。多分自分の心の整理がつかないまま日々を過ごすことになる。

交通事故ってそういう事なんですよね。僕らは親父も交通事故で亡くなっています。そして自分はそんな業界で整備士として働いている。

もうジレンマですよね。乗ってほしくないけど、みんな生活するためには乗らないといけない。解決策がないまま時間が経過していくのを見ているだけ。

自分が高齢になる前に、便の良い場所に引っ越すのが重要

理想を言えば、自分の健康寿命がもうそろそろヤバいと思ってきたら、便の良い街へ出るということですよね。

ある程度歩いてスーパーなどに行ける距離に住んでいれば何とかなる。

それをできれば60代~70代前半くらいまでにできていれば、車はなくても生きていけます。今まで住んでいた地域を離れるのってそれも相当なストレスだと思うんですけど。

インフラが整うまではこれが一番の最善策だと思います。

自動運転のイーパレットをトヨタが作ってるだろって思う人もいるかな?でもあれって、田舎を走らせることはまだまだ無理。

トヨタは街を作ろうとしています。トヨタが作った街で、その中は5Gの通信インフラがあり、すべてを制御しながらイーパレットを稼働させるようになっています。

田舎にいきなりイーパレットを持ってきてもダメなんですよ。

ここから20年もたてば、車業界も相当進化しているだろうけど、10年先くらいまでは高齢者による事故は右肩上がりになっていくと思います。

分かっていても止められないジレンマ。交通被害者の気持ちもわかるし、現場で生活していると車がないと困るのもわかる。最強のジレンマの中で今日もレッカーをしています。

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