BRZと86のバルブスプリングのリコールはエンジン載せ替えが一番の解決策だと思う

知り合いからBRZと86ですごいリコールが出そうだ!

という情報をちょっと前にもらっていたんですが、ネットでも騒ぎ出してきたのでどうやら本当になりそうですね。

今回リコール作業になる部分はなんとバルブスプリングです。まだ国土交通省を通しての正式リコールではないみたいですけど。

バルブスプリングの交換ってどういうことか想像してみてください。以前レクサスでも同様のリコールを出しました。

ただ、レクサスとこのBRZと86ではまた話が大きく違ってしまう。

一番問題なのはBRZと86のエンジンって、水平対向エンジンが載ってますよね。水平対向エンジンって、当サイトの常連閲覧者様なら説明するまでもないですがちょっと解説を。

通常の4気筒エンジンはクランクシャフトを介してピストンが上下に動きます。なのでエンジンが縦長になる。

これに対して、V型エンジンというものは、4気筒だとしたらエンジンの半分上部分のシリンダーヘッドを左右2つに分ける。そしてその角度を60度などに取り付けて、まるで英語のVの字みたいな形をしているからV型エンジンと言われます。

エンジンを直列4気筒からV型4気筒にするメリットは、長さを短くできる。ただその代わりエンジンの幅は広くなる。今V型4気筒なんて車では使われていないですけど。

では水平対向っていうエンジンはどうなのか?V型の60度バンクをなんと180度まで水平にする。するとピストンが通常の上下運動ではなくて左右に動くようになります。

これがスバルが得意としている伝統の水平対向エンジンです。ポルシェなんかもそうです。

なんでこんなレイアウトなんだ?っていうと、エンジンを水平までバンクさせると縦長から平べったくなります。エンジンを低く作ることができるわけです。

そうすることによるメリットは低重心にできる。つまり運動性能を向上させることができるということです。

この水平対向エンジンがBRZと86には積まれている。

そしてリコールに話をもどすと交換しないといけない部品って、バルブスプリングです。

バルブスプリングってどこについているのかというと、シリンダーヘッドのちょうどど真ん中付近です。

普通の直列4気筒エンジンで作業フローを書いてみると、

ヘッドカバーを外す→タイミングベルトやチェーンを外す→シリンダーヘッドを下ろす→カムシャフトなどを外してバルブスプリングを取り外す。

こういうフローになります。当然整備業界ではシリンダーヘッドを下ろさなくてもバルブスプリングが交換できるエンジンも存在します。裏技もあります。

基本的にはこういう流れ。でもこれは直列4気筒の話。V型エンジンでもこれと同じ工程でいけます。

しかーし水平対向エンジンはこうはいかない。なぜか?

エンジンの横幅がありすぎて、車にエンジンを積んだままでは作業スペースがない。

つまり今回のBRZと86のバルブスプリング交換のリコールは車からエンジンを下ろさないといけないわけです。

エンジンを車体から下ろす→ヘッドカバーを外す→インテークマニホールドとエキゾーストマニホールドを外す→そしてフロントカバーを外してタイミングチェーンを外す→カムキャリアを外す→ようやくシリンダーヘッドをエンジンから外す。

ここからバルブスプリングコンプレッサをつかって、リコール部品であるバルブスプリングを1ずつ外していく。16バルブだから16個です。

この作業をどのくらいの時間でできるだろう?

おそらく熟練したメカニックだったら1日でできるかもしれない。ですが、エンジンのパッキンには液体ガスケットを使ってる場所がいくつもあり、乾燥させる時間が必要です。

そのあと水とオイルを入れ直して、漏れなどを確認してテスト走行。ようやく引き渡しです。

1台あたり2、3日は欲しいですよね。きちんと確認作業をするまでに。市場に出回っている台数を計算すると・・・。膨大な時間が必要なリコールになる。

もう一つ問題になるのは、結構走りこまれている車が多いということ。普通に街乗りだけに使われてる車じゃないですからね。レースにもジムカーナにも使われている。当然ドリフト仕様になってるのもある。

それらのエンジンをおろして、単純にバルブスプリングを交換すればいいのか?リコール作業だけで考えればいいんでしょうけどそういうわけにはいかないことって多々あると思うんですよね。

もしかしたら、バルブに異常をきたしてるエンジンもあるかもしれない。その場合、ついでだから交換しましょうとなるんでしょうけど、そこから部品発注。その部品だけはオーナー請求で・・。なんていうことを1台1台やるわけです。

もうディーラー整備士たちの負担は相当なものになるでしょう。

当然、過酷な作業環境下で凡ミスだって出る可能性がある。リコールによる二次災害ですよね。例えばホース類だって外さないといけない。だけど、再利用できないかもしれない。そういった場合の部品はどうするのか?

作業が終わったあと、チェックしたつもりでも水漏れやオイル漏れが発生するかもしれない。そうなったら2回目の作業は単純にディーラー負担になってしまうのかなどなど。

これらの問題を回避する方法は1つだけしかありません。

リコールでエンジンを載せ替えるという方法をとるだけです。この方がよっぽど作業は早いしリスクも少なくなる。そしてオーナーたちも喜ぶわけでしょう。

くたびれたエンジンのバルブスプリングを交換するってなると、載せ替えてもらった方がよっぽいい。

この解決策をスバルがどう選択するかは不明ですが、できればエンジンASSYで用意してもらうほうが時間も負担もかからなくてスムーズに終わると思うんですよね。

部品代だけなら確かに費用は安いです。だけどディーラーに作業工賃を支払わないといけないでしょう。そして二次被害の問題など全てを踏まえて考えるとエンジン載せ替えが一番安全です。

とりあえず、86やBRZがバルブスプリングが原因でぶっこわれたっていう話はあまり聞かないので、オーナー的には普通に使う分にはすぐに不具合はでないんじゃないかなと。

もしバルブスプリングだけの交換しかスバルが用意しなかったら、もっと走行距離を伸ばしてくたびれたエンジンをリフレッシュするという意味合いでリコールを受ければいいのではないですかね?

10年10万キロも走れば各部からオイル漏れも発生してくることですから。最低でもヘッドガスケットまでは交換するだろうから、リコールを受けるなら使い込んでからの方がいい。

順番待ちもかなりかかるだろうし。初期にリコールを受けるとまだメカニックが作業に慣れていないし。

それより問題なのはトヨタ側かな。86のリコールはトヨタディーラーで作業をするようになるから。スバルにとっては水平対向エンジンはお家芸ですが、トヨタ整備士にとってはスバルのOEMエンジンなので、馴染みが薄いですしね。

トヨタとスバルのディーラー整備士、頑張ってください。くじけないように。

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