ここ最近ビッグモーターの問題があり、車業界全体に激震が走っています。
車の工場と保険会社の癒着。交通事故被害者のための自賠責保険なのに、なぜか加入することで保険会社にメリットがあったり。
そもそも車検って必要なのか?というところまで話が及んできています。指定工場で車検整備と検査を日常的に行っている身として、車検が必要なのかどうなのか?
もう一度改めて考えてみたいと思います。
僕は車検が必要か否かといえば、いらないと思います。
特に思うのは、車検が終わった後の完成検査。あれに一体なんの意味があるのか?疑問がものすごくあるんです。
ユーザー車検をやったことがある人なら、完成検査の現場を目撃したことでしょう。
検査ラインに入って、検査員による同一性の検査から始まり、サイドスリップ検査、ブレーキ検査、スピードメーター検査、排気ガス検査、ヘッドライト検査、ホーン検査、下回り検査。
これらの検査で何がわかるのか?
はっきりいってこれら完成検査で、その車両の状況を把握できるかというと、そんなことは一切ないと言いきれます。
検査の中で一番重要なのは下廻り検査ですね。車両の下から各部ジョイントのガタ付きや水漏れ、排気漏れをチェックするもの。
これだけは非常に重要です。あとははっきりいえば、環境の面を考えると排気ガス検査くらいでいいんじゃないかって。
なぜかというと、例えばブレーキパッドって新品だと10mmくらいあります。これがたとえ1mmしか残っていなくても、車検の検査でブレーキ検査をパスすることができるから。
極端な話検査場を過ぎた瞬間にブレーキパッドが終わって、ブレーキが効かなくなっても車検には合格できてしまう。こんな検査に一体何の意味があるのか?
逆をいえば、これらの検査にパスできる整備をしておけば、車検には合格できるわけです。では何故、整備工場での車検が必要になるのか?
では、車検制度がなくなったとしてどうなるか?
おそらく今以上に故障車が増えてそれが起因となる事故が増えるでしょう。これは100%間違いありません。
特に危ないのがブレーキとサスペンションです。
自分の車のことを、自分で把握できる人の方が少ないです。
僕は現役の自動車整備士をしていますけど、もし整備工場に勤めていなければ、自分の車の整備に絶対の自信を持てるかと言われるとNOと答えます。
車の知識があったとしても、車両をリフトアップして下から状態を確認できるような環境じゃないと、潜んでいる故障を見抜くのは無理です。
ブレーキの残量に関しては、自分で確認することができます。サスペンションのボールジョイントのガタ付きなどは、車両をリフトアップしないとなかなかみぬけません。
もし車検がなくなっとしたら、急にブレーキが効かなくなった車が追突をしたり、ボールジョイントがカーブの段差で抜けてしまい、歩道に突っ込む車も絶対に出ると思います。
問題はその責任は使用者と車の所有者が取らないといけないということです。
皆さんも車の状態がひどくて車検に通せそうにないから、乗り換えた方がいいという提案をされたこともあるかと思います。
そのジャッジをするのも自分自身では難しいです。車の下がこれだけ錆びて穴開いてれば、何かあった時に非常に危険です。リフトアップしないとなかなか細かく見ることはできません。
車検が高額に感じるのは、車業界のせいではなくて国のせいでもあります。
まず車検って法定費用がかかります。
・自賠責保険
・重量税
・印紙代
これはどこの整備工場でも一律同じ金額です。これらは工場の利益になるとかそういうものではありません。
何なら自賠責保険は自分が故意にしている保険会社で、自分自身で切ってきてもらっても結構です。
そして重量税。これは国に納める税金です。なんなら車検の時ではなくて、毎年5月に支払う自動車税と同じで市や県に納めてもらってもいいんじゃないですかね。
印紙代というものが、検査に関わる唯一の金額です。OSSなら1600円。普通の検査であれば1800円です。
これを車検の時、全部まとめて法定費用として車屋さんに払わないといけないため、高額に感じます。
車屋に勤めていますけど、法定費用なんて余計なんです。各々がちゃんと管理して然るべきところに払ってもらえれば結構で、それをわざわざ代行してあげているんです。
なんなら税務署が一括で管理してもらっても結構です。毎年徴収にしてもらってもいいんじゃないですかね。重量税を。
車検費用が高いと思うのは、法定費用がかかるから。ここを車検と切り離してもいいんじゃないかと。
次に車検をなくすのであれば、前述した通り車両の状態が悪くなり、故障車がでる確率が増えます。
単独で故障するのなら、それは本人にしか害はないのでいいんです。
問題はそれが原因でものを壊したり、人を傷つけてしまったりした時。これを従来通りの過失とするのはダメでしょう。
今までの交通ルールで考えれば、車検を行った車が事故をするというのは、それぞれ専門の人間が見て検査を通しています。
そこまで酷い車は走っていない。
それが、車検をなくす事で足回りがガタガタの車が街中を走ることも増えます。急にハンドルが効かなくなって歩道に突っ込み人身事故をしてしまった。
これは車の使用者が責任を負わないとダメです。罰則を今以上に強くしないと、増える事故に関して保証が行き渡らなくなる。これでは意味がないですから。
そして、今でもありますが車検切れで走って事故を起こした場合。これは自賠責保険も切れてる可能性があるため、被害者への弁済が難しくなります。
開き直って自分は払えないと主張する輩も出てきます。これを防ぐには、コネクテッドカーならe自賠と連携させて、自賠責に加入してない車両はエンジンがかからなくするなどといった処置が必要になってくるかなと。
この辺も整備しないと車検を無くした後の方が悲惨だった。ということになりかねません。
最後にまとめてみます。
車検をなくすとしたら、現行のものからどうすればいいか?
・完成検査の項目を簡略化する(実用に伴ってない検査を省く)
・故障して事故をした場合の罰則を強化する
・重量税などは自動車税と同じタイミングで市や県、税務署で納めるように変更
・法定点検を義務付ける
・自賠責保険と対物対人をセットにした保険を支払わないとエンジンがかからない車にする
ここまでやればまあまあいいんじゃないかなと。
今の車検制度って悪くいえば、検査に通りさえすればいいといった人が多いです。そうではなく、走行に関して危険なところはもっと手を入れてあげる整備に移行する。
ここがポイントですね。いずれにしろここらで、車業界を見直すのも必要だと思います。その時は重量税などについては、きちんと国としても責任を持ってほしいです。
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ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。