走行距離が進んで10万キロに達していた。今まで通りのオイル交換方法でいいのだろうか?お客さんにこのような質問をたまに受けることがあります。
新車時のエンジンと走行10万キロオーバーのエンジンでは、オイル交換の方法や使用するオイルを何か変えたほうがいいのか?
今回は10万キロオーバー車のオイル交換について考えてみます。
オイル交換の方法を考えるより、最初に確認しておく事。それは新車時と10万キロ走行時でエンジンはどのように変わっているのか?
抽象的ないい方をすれば
「くたびれている・摩耗している・へたっている」
こんな表現になるのかもしれません。具体的なメカニズムで考えてみます。
乗用車のレシプロエンジンは、高速でピストンが上下運動を繰り返しています。それに伴ってクランクシャフトやカムシャフト、タイミングベルトやチェーンが駆動しています。
走行距離が積み重なってくると、これら部品が摩耗してきます。エンジンオイルで潤滑・保護をしているとはいえ全く摩耗しないエンジンは存在しません。摩耗しないエンジンが存在するとしたら、オーバーホールをしないで永遠に使い続けることができるということになります。
エンジンは大きく分けて二分割します。シリンダーヘッドとシリンダーブロックです。
シリンダーヘッドにはカムシャフトやロッカーアーム、バルブなどがついています。
エンジンオイルで回転するカムシャフトやロッカーアームを潤滑しています。10万キロ走行したらどのように摩耗が進むか?
調整式であればバルブクリアランスが広がってきます。そしてカムシャフトも摩耗が進みますしバルブステムシールなども硬化してしまいます。
各部のクリアランスが広がってきて、オイルを密封するステムシールやオイルシールが劣化して漏れ出してきてしまう。
これがシリンダーヘッドの摩耗。
エンジンの腰下、シリンダーブロックの摩耗は10万キロでどう進むか?
シリンダーブロックには主にクランクシャフト、ピストン、コンロッドが入っています。
ピストンがシリンダー内を上下運動しているので、ピストンリングやシリンダーなどが摩耗してきます。
ピストンリングも摩耗が進み、少しずつですが圧縮圧力が抜けてきます。基準以下の圧縮になってしまうと、オーバーホールが必要になります。
シリンダーブロックが摩耗してくると、オイル消費が増えたりメタルから音が出てくることもあります。
新車時のエンジンと10万キロオーバーのエンジンでは、各部の摩耗などが進みます。
それではここから今回の本題になりますが、新車時と10万キロ走行時でオイル交換の方法をかえたほうがいいのかどうか?という点について。
まず判断材料となるのはオイルの消費量です。僕が今乗ってるエンジンは11万キロオーバーです。1000km走ると、レベルゲージFまで入れておいたエンジンオイルがLより少し上のあたりまで減ってしまいます。
計算では2000km走る前にレベルゲージにオイルがついてこなくなる。このまま使い続けると、オイルの量が足りなくなってしまいます。なので、僕は1000km走行時にオイルを補充するようにしています。
走行距離2000kmごとでオイル交換をするかというと、まだオイルは使えるので補充で対応しています。
このようにオイル消費が激しくなってくると、レベルゲージのLになる時点でオイルを補充するか交換するかしないといけません。
オイル消費が激しくなってしまったエンジンは、メーカー指定の交換スパンより早めの交換を実施したほうが安全です。
新車時のエンジンは0W-20のオイルを入れ続けてきた。10万キロをこえたら、オイルの種類を変えたほうがいいのかどうか?
大体の車は指定粘度として0W-20の他に5W-30が指定になってる場合が多いです。では、10万キロオーバーになったので、5W-30に変更しようか?
こういう考え方も思いつく人がいます。粘度が高いオイルのほうが、油膜が厚くなるので若干でも圧縮が回復するという理屈も確かにわかります。
しかし、粘度が高いオイルを入れるとそれだけエンジンに吸い込まれやすくなるという、意見もあります。ピストンが下がって吸入工程に入る際にバルブステムシールが劣化していると、固いオイルだとより吸い込まれやすくなる。
この理屈もわかります。
使用するオイルに関しては、体感ができるか?というとそうでもないのかなというのが僕の持論です。サーキットでのレースなどコンマ1秒を争う世界ならわかりますが、街乗りレベルでは10万キロを超えたからと言って、使用するオイルを変更しても体感はできにくいでしょう。
あくまでイチ整備士の意見ですが、10万キロを超えたエンジンのオイル交換について。
量の消費が新車時よりも早くなります。量だけはきちっと規定量入っているかチェックをこまめにすること。
著しく減ってしまう場合はその時点で交換をするか、補充をすること。
使用するオイルを変更してもあまり体感ができないので、僕は各種添加剤をいれることをお勧めします。
例えば、モーターレブ多走行車という添加剤。
こちらは固くなったオイルシールの弾力を回復させて、オイル消費を軽減。PCVバルブなどをクリーンにしてさらには油膜などを保護する添加剤が配合されています。
10万キロ走行の摩耗したエンジンを隅々までリフレッシュしてくれるオイル添加剤。とても理にかなっています。
このようなオイル添加剤を、オイル交換時に織り交ぜて使っていくことでエンジンの調子を少しずつ内部からリフレッシュしていくのがお勧めです。
具体的な工賃などはかからないで、オイル交換時に一緒に入れるだけでオッケーなのでお手軽で費用対効果が高いです。
10万キロを超えたからと言って、すぐにオイル交換の方法を見直す必要はないと思います。20万キロ、30万キロ走った車も入庫してきますが、気を付けるのはやはり量の確認だけです。
いつも入れているエンジンオイルでも問題ないので、量だけはきちっと点検するようにしてください。
ガソリンスタンドでアルバイトをはじめ、その後指定整備工場へ就職。
働きながら、3級ガソリンエンジン、2級ガソリン自動車の整備資格を取得。2級整備士の資格を取得後整備主任に任命され、自動車検査員の資格を取得。
以後、自動車整備の現場で日々整備に励んでいます。
現役自動車整備士であり、自動車検査員。YouTuberもやっています。車の整備情報から新車、車にまつわるいろんな情報を365日毎日更新しています。TwitterやInstagram、YouTubeTikTokも更新しているのでフォローお願いします。